不妊・婦人科疾患の症例

    赤ちゃんが元気に生まれてきてくれるためには、まず、卵子の中に精子と受精してから着床するまでの分割などに必要な栄養素などが正常に存在していなければいけません。もし、それらが十分でないと、途中で分割が止まってしまう可能性もありますし、着床に必要なエネルギー不足などにより着床の障害になってしまう可能性もあります。もちろん、赤ちゃんが元気に生まれてきてくれるためには、子宮内フローラの状態や免疫機能などたくさんのことが関与して、さまざまな困難を乗り越えなければいけません。でも、そのために最初に大切なことが卵子です。ですから、当院では、卵子内に細胞や栄養素などを正常に存在させることが最も大切なことだと考え鍼灸治療を行っています。そのため、定期的(2週3回、もしくは、最低週1回。但し、採卵前や移植前後は異なる場合があります。)に最低3~4ヶ月の治療継続が必要だと考え、お願しています。

    鍼灸治療が得意とする体質を変える(最低でも3ヶ月必要)という期間も関係していますが、それ以外にも理由があります。その理由とは、排卵予定の卵子候補が選ばれ、卵子に栄養を取り入れやすい期間と関係があります。排卵予定の卵子が選ばれるのは、短い場合でも120日前だと言われています。勤務している頃は、排卵候補として選ばれる前の膜の薄い時期に鍼灸治療は骨盤内空の血流を良くし、何らかの良い影響を与えていると考えている。と聞いていました。それも一理あるかもしれません。でも、卵子が成長する時期のことを考えていたら、疑問に思えてきてその時期との関係はないのだろうか?という思いにかられてしまいました。そして、見つけたのが、講演で聞いた内容をメモしたものでした。そのメモには、卵子は排卵の60~90日前が最も栄養を取り入れやすい時期だと書かれていました。当院では、タイミング法や自然妊娠される方が不妊鍼灸に来られている方の中で最も半分以上です。もちろん、お願した期間、真面目に治療を続けられても妊娠に繋がらない方がいらっしゃるのも事実です。でも、自然妊娠の方の中には早い方だとまだ3ヶ月経ってないよね。という段階で嬉しい報告を聞くこともあり、これは、卵子が最も栄養を取り入れやすい時期と重なっています。また、体外受精をされている方の場合、全ての方ではありませんが、3ヶ月以上治療継続された方の場合、鍼灸治療前より鍼灸治療後に採卵した場合のほうが採卵数、受精卵のグレードなどよくなる方が多いです。
    当院で不妊鍼灸をされた方の妊娠されるまでの治療期間はバラバラです。

    鍼灸治療がどの段階でどのような影響を卵子に与えているのか?まだまだ研究を必要とするところですが、これらの研究については今後も研究が進むのは難しいと思います。ですから、鍼灸治療を受ける前と受けた後の採卵数やグレードなどの違いからしか予測できない状況であるのも事実です。

    月経異常と不妊治療の症例

    婦人科の疾患には、子宮内膜症や子宮筋腫などがありますが、その他に無月経や稀発月経などの月経異常でも治療が必要な場合があります。それらを治療せずにそのままにしておくと、不妊の原因になったり、日常生活に支障をきたしてしまったりすることもあり、それらに対しても鍼灸治療が効果的な場合もありますで、ご紹介させていただきます。

    月経異常の症例

    月経異常には、無月経だけでなく、さまざまな種類がありそれらを全て含めて月経異常といいます。

    出産後の変化

    出産後の月経過多
    【来院までの経過】
    20代後半。第1子出産後、経血量が出産前の約2倍近くになり産婦人科より処方されたピルを内服したが、その周期のみ正常で服用を中止すると経血量が増加するという状態でした。

    【来院までの経過】
    20代後半。第1子出産後、経血量が出産前の約2倍近くになり産婦人科より処方されたピルを内服したが、その周期のみ正常で服用を中止すると経血量が増加するという状態でした。

    ストレスによる変化

    無月経(稀発月経)
    【来院までの経過】
    30代後半。強いストレスにより無月経となられ、婦人科に2年半ほど通院。内服薬を服用されていたが、内服薬を中止したあと正常な月経周期は2~3周期で、その後、月経周期が長くなり、基礎体温も二相性ではなくなってしまった。しかし、婦人科を受診することにストレスを感じ、通院を中止したり、再開したりされていた。また、内服薬服用に抵抗もあり、内服薬なしで正常な状態にしたいと希望され来院された。

    【治療経過】
    開始して2周期目で月経周期約40日となった。その後、1度だけかなり強いストレスを受け2ヶ月以上の周期になることがあったが、それ以外の周期は内服薬なしでも30日前後と正常な周期となった。しかし、なかなか低温期と高温期が 0.3℃以上の二相性と判断しにくい周期が続き、この先、妊娠も視野に入れられていたので二相性と判断できるようになるまで継続し、最後は約1周期、鍼治療せずに様子をみたが、良い状態が続いていたため終了としました。鍼灸治療を開始してから約1年9カ月の治療でした。

    不妊の症例

    不妊鍼灸を受けられる方には、原因となる因子が見つけられていない方も多いです。しかし、多嚢胞性卵胞症候群、高プロラクチン血症、黄体機能不全などの因子が複数存在する場合もあります。

    自然妊娠

    高プロラクチン血症・子宮内ポリープ
    【来院までの経過】
    30代前半。高プロラクチン血症と診断されたが、その他の卵管検査や子宮検査などでは異常はみられなかった。しかし、痛み止めを服用するほどの月経困難症があるとの訴えをされていました。高プロラクチン血症の治療薬を服用されながら排卵誘発剤を注射してのタイミング療法をされている状態でした。

    【治  療】
    開始から3ヶ月半くらいはタイミングを取れないことが多く、卵胞は育つものの発育までに時間がかかってしまっていたため、クロミッドの服用を病院で勧められました。しかし、服用されませんでした。クロミッド服用を勧められたすぐ後に子宮内ポリープが見つかり、手術をされました。ポリープ切除後病院の受診を止められ、不妊鍼灸治療のみ手術を受けられた3ヶ月後に産婦人科にて胎児の心音を確認され、流産される方がかなり減少する12Wまで鍼灸治療行う。不妊鍼灸を開始してから約11ヶ月の治療でした。
    多嚢胞性卵巣症候群・抗精子抗体
    【来院までの経過】
    30代前半。最初に受診した産婦人科でクロミッド服用によるタイミング指導を1年半されていましたが、陽性反応が出ることはなく、多嚢胞性卵巣症候群と診断されていました。その後、転院され、再度、転院先で様々な検査をされ特に問題はありませんでしたが、転院先で初めて行ったヒューナーテストの結果が悪く、次周期は人工授精へのステップアップを勧められた状態でした。

    【治  療】
    鍼灸治療開始後、初めての人工授精(AIH)に向け、月経5日目から数回卵胞検査をされていましたが、卵胞があまり育っていない(成長にかなり時間がかかっていた)ためAIHは中止となりました。その後はタイミングをとるために数回卵胞検査されましたが、排卵されていないと排卵誘発ホルモン剤の補充をされました。その後、病院を受診すると妊娠5Wで胎嚢が確認でき、1週間後には胎児の心音も確認、流産の危険がかなり減少する12Wまで鍼灸治療を行い、不妊鍼灸を開始してから約3ヶ月半の治療でした。

    人工授精(AIH)

    高プロラクチン血症
    【来院までの経過】
    30代後半。4年前に婦人科を受診しタイミング指導を受けられていました。来院される前の1年間に婦人科を3ヶ所転院しタイミング指導を受けて、妊娠されていましたが、流産されていました。どこの病院でも卵管検査、子宮検査、ホルモン検査など異常はありませんでした。
    流産後、人工授精(AIH)を1度されていましたが陽性反応はでず、その後、病院を変わり高PRL血症であることの診断をされていました。ホルモン補充と高プロラクチン血症の内服薬服用にてタイミング指導を1度されていました。陰性判定の場合、さらに病院を変わろうと考えていらっしゃいました。

    【治  療】
    開始後5ヶ月間は婦人科受診なく高プロラクチン血症の内服薬も中止されていました。
    今までに受診したことのない婦人科を受診され、一から検査をやり直しました。やはりプロラクチンが高いとの診断を受け内服薬の服用開始しました。ヒューナーテストも結果が悪くAIHの説明を聞かれていました。しかし、説明に納得できなかったとステップアップすることを躊躇され、婦人科を変わられました。転院した病院でもやはりヒューナーテストの結果が悪かったためAIHへのステップアップすることを決心され、ホルモン補充(内服薬)にて転院後2回目のAIHで陽性反応がでました。胎嚢確認、胎児の心音も確認でき、流産の危険がかなり減少する12Wまで鍼治療を継続しました。不妊鍼灸を開始してから約1年6ヶ月の治療期間でした。

    体外受精・顕微授精

    チョコレート嚢腫・子宮内ポリープ・不育症
    【来院までの経過】
    30代後半。不妊治療を始める4~5年前に子宮内膜症、チョコレート嚢腫の診断を受けたが手術を受けるほどではなく約1年間、ホルモン補充によるタイミングをされていました。この間には、子宮内ポリープ切除もされていました。タイミング指導を受けた後、人工授精(AIH)にステップアップしたが妊娠にいたることはなく、約2年間、他の鍼灸師さんの治療を受けながらホルモン補充でのタイミング・人工授精を行われていました。しかし、妊娠の陽性反応が出ることはありませんでした。この2年の間に子宮内膜症の手術を受け、子宮筋腫の診断もされていました。しばらく不妊治療を休むことを決断した直後に妊娠が判明しましたが、流産されていました。少し不妊治療を休んだ後、体外受精にステップアップするため病院を変わり、hMG-hCGにて採卵。8個採卵(成熟卵6個、うち2個胚盤胞。1個移植し、1個は成長が遅く破棄)。妊娠判定は陰性でした。子宮内膜症再発のため3ヶ月卵巣を休め子宮内膜症の部分を薄くするための治療を行い、子宮内膜症の治療が終わると体外受精を再開する予定ということでした。

    【治  療】
    初回から約2ヶ月間は子宮内膜症を厚くしないように治療を行いながら次の採卵に向けての準備も行いました。子宮内膜症治療終了後、最初の採卵で10個採卵(成熟卵8個、うち1個移植、4個凍結)。1度目の移植で妊娠反応(+)胎嚢も心音も確認できましたが、心音が弱く、その後流産してしまいました。この時、不育症検査を行われましたが、原因はみつけることができなかったと医師より説明されたとのことでした。凍結した胚盤胞を2個解凍し、移植。2個とも陽性反応がでました。今回は、流産防止のため血液凝固防止の注射を毎日行いました。しかし、1度目の移植のときより長くお腹の中で成長してくれたのですが、どちらも流産してしまいました。数ヶ月後、残りの凍結した2個の胚盤胞を解凍、移植し、2個とも陽性反応がでました。今回も毎日、流産防止の注射も行いながら鍼治療も継続し順調に成長し安定期に入りました。そして、無事に出産されたと連絡をいただきました。 私が担当させていただいてからの期間は、約10ヶ月でしたが、その前に鍼治療を受けられていた期間も含めると、約2年10ヶ月となります。

    不妊治療に関するサイト 不妊College
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