不妊と免疫

不妊と免疫

不妊因子でも免疫因子として免疫学的寛容や精子に障害を与える抗体や精子の運動を停止させてしまう抗体などを産生してしまうことなどについてご紹介していますが、それ以外にも不妊に関係している免疫因子があります。

免疫細胞や免疫細胞が分泌するサイトカインなどが不妊とどう関係しているのか?さまざま報告されています。それらについてご紹介させていただきます。

妊娠とNK細胞

私達が細菌やウイルス感染などをしたときなど、その敵と戦ってくれる免疫細胞であるNK(ナチュラルキラー)細胞が体内には存在していて、いくつか種類があります。このNK細胞は、妊娠の成立や維持に必須の細胞だと言われています。妊娠成立する頃には、子宮内に存在する免疫細胞のうち70%以上がNK細胞だということが分かってきています。中国の大学が発表した論文では、妊娠初期、子宮内ではNK細胞が上昇し、胎盤形成後にNK細胞の減少が起こると報告されています。その内容には、NK細胞が胎盤に分化するトロフォプラスト(胎盤の主要な構成細胞)の発現するHLA-Gに刺激され、血管増殖因子などが分泌されることをつきとめたとも記載されているようです。NK細胞は、血管新生だけでなく、絨毛細胞増殖の作用も報告されています。これらからNK細胞は、胎盤の形成にかかすことのできない細胞なのだと考えられますね。

中国の大学が発表した論文の内容

  • 遺伝子操作でNK細胞が欠損したマウスを調べ、NK細胞が欠損した母親では、胎児数が低下し、骨格を中心に発達遅延が起こることが示されている。この異常は、年齢が高い母親でより著名に見られるようになること
  • 受精した人間の胚について調べ、HLA-Gが発現していることを確認したあと、習慣性流産の患者さんの子宮脱落膜中のNK細胞数を調べ、予想どおり数が半分以下に低下していることを調べていること
  • マウスの実験で、NK細胞を静脈内に移植すると、NK細胞欠損による発生異常を治すことができることを示すとともに、移植実験でNK細胞が分泌する増殖因子が胎児発生にかかわることも証明していること
  • これらの内容が報告されている。

    また、習慣性流産を繰り返しているマウスでは、子宮脱落膜内においてNK細胞が半分以下に低下していた。という報告もされています。

    HLA-Gとは

    HLA-Gは胎盤・胸腺・腫瘍細胞などの組織特異的に発現する非古典的MHC(主要組織適合遺伝子)クラスIのひとつです。妊娠時の胎盤では胎児が母体の免疫を逃れるためにHLA-Gを発現して免疫抑制を誘導していることや、最近では、制御性T細胞がHLA-Gを発現し、免疫抑制機能を発揮していることが分かってきました。

    ※非古典的クラスI分子の中には、ナチュラルキラー細胞の活性化をもたらすNKG2Dリガンド分子群や、特殊な抗原提示を行うCD1、 MR1分子の他、疾患の発症や生体防御にかかわる数多くの分子が存在します。

    不妊とNK細胞

    妊娠にNK細胞が必要であることをご紹介しました。
    しかし、NK細胞がたくさんあれば妊娠にいい影響だけもたらす細胞ということではありません。NK細胞は不育症・着床不全・流産の原因となる可能性も高い細胞になります。それについて、ご紹介していきます。

    NK細胞には種類があります。そして、子宮内膜の免疫細胞は末梢血とは異なり、CD16CD56brightNK細胞が分泌期に増え、妊娠脱落期には免疫細胞の70%以上を占めるまで増えていきます。しかし、末梢血では、傷害性の高いCD16CD56dimNK細胞がほとんどを占めています。子宮内と末梢血中のNK細胞は異なるということです。
    妊娠して、何等かの理由で傷害性の高いNK細胞が子宮内で増え、妊娠の維持に必要なNK細胞が子宮内で減ってしまっていると不育症や反復着床不全となる可能性は否定できません。
    不育症や反復着床不全の方などNK細胞活性が高い場合があるといわれています。そして、不妊症や反復着床不全の方などでは末梢NK細胞活性が高いとも言われています。
    また、NK細胞内には細胞障害顆粒が複数存在しますが、流産例では、NK細胞内で標的細胞のアポトーシスを引き起こす顆粒が増加していることが報告されており、子宮内膜や子宮筋まで浸潤する胎児由来絨毛外トロフォプラストの核をこの顆粒が攻撃していることが流産例から明確になっています。

    NK細胞について
    不妊とNK細胞の関係について調べながら、最初は混乱しました。
    妊娠を維持するのに必要なのに、妊娠を妨げてしまう❓
    どういうこと🤣
    妊娠時、子宮内にどの種類のNK細胞が存在しているかが大切だということだと思います。スーパーライザー照射は、着床不全の原因となるNK細胞の減少が報告されています。(不妊とスーパーライザー)

    不妊とサイトカイン

    サイトカインとは、種々の細胞から産生されます。多数の異なる細胞から産生され、多数の異なる細胞に働きかけるタンパク物質と定義されたものです。標的細胞にシグナルを伝達し、細胞の増殖、分化、細胞死、機能発現など多様な細胞応答を引き起こすことで知られています。免疫や炎症に関係した分子が多く、各種の増殖因子や増殖抑制因子があります。(研究.net/医学大辞典より)

    サイトカインとは主として免疫細胞などから分泌される物質で局所で作用します。

  • 妊娠に好影響を与えるサイトカイン
    ILー10、TGF-βなどの免疫抑制活性を持つサイトカイン
  • 妊娠に好影響を与えるサイトカイン
    ILー10、TGF-βなどの免疫抑制活性を持つサイトカイン妊娠に障害作用を持つサイトカイン
    ILー2、TNFα、インターロイキン(IFN)、ILー17等のサイトカイン
    これらのサイトカインは、いずれもリンパ球や単球に作用し、拒絶反応を引き起こす。これらのサイトカインの中で強い炎症を誘導するTNFαは、最も着床障害や流産に関連すると考えられるようになってきています。
  • GM-CSF

    GMーCSFとは、女性の生殖器官から自然に分泌されるサイトカインで着床を促し妊娠維持に重要なサイトカインだと言われています。流産を繰り返す方は血中のGMーCSFの量が少ないと報告されています。
    また、GM-CSFはサイトカインのバランスをコントロールする制御性T細胞を増やし、間接的に着床、妊娠維持を促すことが出来る事が分かっています

    炎症とサイトカイン

    着床時、子宮内膜では炎症のような反応が起こり胚が子宮内膜組織に着床しやすい環境が作られます。胚の着床後は炎症が行き過ぎないように炎症を抑えることで妊娠を維持します。炎症が行き過ぎないようにしているのが制御性T細胞という自己免疫やアレルギーにもかかわりのある免疫細胞であり、過剰な炎症反応を抑制することが出来ると言われています。つまり、妊娠を維持するには、炎症を起こすサイトカイン(炎症性サイトカイン)と炎症に抗うサイトカイン(抗炎症性サイトカイン)のバランスが重要だということになります。炎症性サイトカインが多すぎると受精卵の受け入れが出来なかったり、流産してしまったりします。このバランスを保つのが制御性T細胞が分泌するサイトカインになります。炎症性サイトカインを出す細胞に制御性T細胞が分泌したサイトカインが炎症性サイトカイン分泌の抑制を伝えます。

    妊娠とTh1/Th2バランス

    Th1とTh2の妊娠に適したバランスは、Th1の細胞機能が低く、Th2の細胞機能が高い状態だそうです。Th1/Th2のバランスが崩れ、どちらかに偏ってしまうことが流産や妊娠合併症などをひきおこすきっかけとも考えられています。
    Th1が優位の場合、体内の異物排除に働く免疫が強まり、Th1から分泌されるサイトカインは妊娠に有害となります。Th2が優位の場合、抗体などを作る免疫が強くなり、Th2が分泌するサイトカインは妊娠をサポートしていると考えられています。

    何等かの原因よりこのバランスが崩れた場合、Th1優位で自己免疫疾患、Th2優位で花粉症などのアレルギー反応がおこるようです。

    これらの他にも関係する免疫やサイトカインなどがあります。もしかすると、妊娠との関連が分かっていない免疫やサイトカインなどが存在するかもしれません。
    妊娠と免疫やサイトカインの関係が研究されるようになり、培養液にサイトカインが含有されていたり、治療にも追加されたりしています。

    妊娠と免疫グロブリン

    アレルギー疾患などとの関係でも知られているIgA(妊娠に有害)やIgG(妊娠をサポート)の関与も報告されています。IgAは外的排除に働くので、排卵期のIgAが上昇し、妊娠をサポートするIgGが減少すると、排卵期、精子に対してダメージを与える作用が強くなると考えられます。

    母体の免疫学的寛容(トレランス)

    お母さんは、出産するまでにたくさんの免疫学的寛容(トレランス)により自分とは異なる細胞を受け入れることが必要となります。
    以前から着床した胚の周囲には多くの母体リンパ球が集まっていることが知られていました。これは、胎児がお母さんに認識され受け入れられていることになります。胎児は、お父さんとお母さんの細胞を受け継いでいるのでお母さんとは異なる細胞になります。ですから、本来の免疫学からはお母さんから拒絶される可能性もあります。その胎児がお母さんから拒絶されないのは、妊娠時には免疫学的寛容(トレランス)が存在するからです。このトレランスを獲得することにより、胎児は子宮内で成長し、出生後は母乳で育つことができます。マウスの研究では妊娠期間中に限って父親抗原特異的トレランスが存在することが分かっています。その証として、母親のリンパ球の父親リンパ球に対する反応性の低下や脱落膜中での細胞傷害性T細胞の減少が報告されています。

    制御性T細胞細胞

    制御性T細胞を除去すると全身性の自己免疫疾患が発生すること、免疫寛容を引き起こすのは制御性T細胞であることが証明されています。妊娠における制御性T細胞の役割については、 制御性T細胞を除いたマウスではアロ妊娠(ヒトではすべてアロ妊娠)で流産が起こること、ヒト妊娠でも末梢血、脱落膜中で制御性T細胞が増えるが、特に脱落膜では末梢血に比し約3倍に増加すること、流産や不育症例での流産では末梢血ならびに脱落膜中の制御性T細胞のレベルが非妊婦と同等になることなどから、ヒトの妊娠維持に制御性T 細胞が重要であることが報告されています。
    また、精漿中に含まれる父親抗原により父親抗原特異的制御性T細胞が誘導され、着床に役立っていること(制御性T 細胞を着床期に除くと着床不全となる)がマウスで証明されています。またエストロゲンやプロゲステロンは制御性T細胞を増加させ、妊娠時の制御性T細胞の増加に関与していることも明らかになっています。
    胎児染色体正常流産例に限って脱落膜(特に着床部にあたる基底脱落膜)で制御性T 細胞の中で、とくに制御活性の強い細胞が減少しており、活性化T 細胞も染色体正常流産例に限って脱落膜で増加していることが分かっています。一方、これらの免疫学的変化は末梢血では観察されません。これらのことは、母子接点の場での制御性T 細胞が減少することによる免疫学的妊娠維持機構の破綻により流産が起こっていることを示唆しています。

    制御性T細胞の増加に関与すると考えらえている物質

    エストロゲン
    プロゲストロン
    GM-CSF
    末梢血NK細胞のTim-3  etc

    アメリカの大学の研究報告
    アメリカのインディアナ大学の行った研究で、性交を行った女性と行っていない女性でのTh1/Th2バランス・生殖ホルモンの関係・IgAとIgGを測定した結果が発表されました。結果、性交を頻繁に行った女性のほうの身体は妊娠しやすい免疫バランスやホルモンの状態となっていたようです。その他にも性交による炎症で、妊娠初期に子宮内で必要な種類のNK細胞が集められているという報告もあります。
    体外からこれらをプラスする治療も最近ではおこなわれ始めていますが、やはり体内で作られる、もしくは、もともと体内に存在する免疫細胞やサイトカインなどによる働きを活性化させたほうがいいのではないだろうか?と私は、思います。

    参考 公益社団法人 日本産婦人科学会 妊娠維持機構/流産に関連するトピックス
       AASJ 母親のNK細胞が胎児の成長を助ける(12月19日号Immuuity掲載論文)
       Science Signaling 末梢血NK細胞のTim-3シグナル伝達が母体胎児間の免疫寛容を促進し流産を抑制する
       Medical Tribune(2007年2月8日)、メディカルパーク横浜 培養室ブログ など

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