不妊治療や妊活に鍼灸治療を取り入れられることのはとても良いことだと考えています。鍼灸治療は、万全ではないけれど優れた治療法だと思っています。不妊治療をされている病院によっては、病院の施設内で不妊治療に鍼灸治療を取り入れているところもありますし、海外などでは、病院で行う不妊治療と鍼灸治療がセットになっている病院もあります。鍼灸治療は、基本的には器質的な変化に対しての効果はあまり期待できません。ですから、チョコレート嚢腫や多嚢胞性卵巣症候群などの器質的変化の病変そのものの治療は難しいです。そして、卵巣に病変がある場合、採卵数が少なかったり、受精卵のグレードがあまり良くなかったりする場合もあります。鍼灸治療は病変に対しての治療はできなくても卵巣にある卵子や子宮内膜などには働きかけることができます。また、機能性不妊(原因不明)や原因因子と考えられる因子を取り除いたのに妊娠に繋がりにくいというお悩みに対しても鍼灸治療は何等かのお手伝いができる。と思っています。
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鍼灸治療を受けたきっかけ
・ 体外受精へのステップアップの提案があった
・ 子宮内膜症などの診断を受けた
・ 体外受精でも受精しない
・ 胚盤胞にならない
・ 受精卵のグレードがよくない
・ 採卵ができない
・ 体外受精で移植しても着床しない
・ ホルモン剤等をできる限り少なくして自然妊娠に近い状態での妊娠を希望される etc…
東洋医学的な不妊の考え方
東洋医学では、不妊のことを「不孕(ふよう)」といいます。治療を行うときに四診(望診、聞診問診、切診)により弁証を立てます。
弁証分別
不妊因子とは異なる考え方ですが、今の身体の状態によって弁証をたてます。不妊(不孕)では、基本的な分類として6つの弁証分別になります。中医学には、虚実という考え方があります。
腎虚の不妊(不孕)
腎の気の虚があり、虚弱体質で腎気が不足するために生じます。弁証の要点として経血の色が暗淡で量が少ない、月経周期が延長あるいは無月経、下腹部の冷え、性欲の減退、腰や下肢がだるく無力、尿がうすく量が多い、舌質が淡、舌苔が淡、舌苔が白潤、脈が沈遅などを呈します。
治法は、温補腎陽・調経衝任。
気血両虚の不妊(不孕)
虚弱体質、多量の出血、脾胃の気の虚による生化不足などで気も血も不足して生じます。弁証の要点として経血が淡色で量が少ない、月経周期の延長、顔面が委黄で黒色の斑点がみられる、頭のふらつき、眩暈、痩せる、脱力感、舌質が淡、舌苔が薄白、脈が沈細などを呈します。
治法は、益気補血・滋腎養精。
陰虚血熱の不妊(不孕)
陰気が不足する体質、慢性病、熱性疾患で陰気が傷つけられ、陰の気が不足し、胞宮に虚熱が欝積して生じます。弁証の要点は、月経周期が短縮し経血が紅色で量が多い、あるいは周期が延長して経血が紫色で量が少ない、顔面紅潮、口唇が紅色、頭のふらつき、耳鳴り、不眠、口や喉の感想、焦燥感、潮熱、盗汗、舌質が紅、舌薄が薄黄、脈が作数を呈します。また、流産後に発生することもあります。
治法は、養陰清熱
肝気欝結の不妊(不孕)
情志が抑うつして肝の気が条達ができず、気血が失調して胞脈が通暢できないために生じます。弁証の要点は、月経周期と経血量が一致しない、経血が紫色で小凝結塊が混じることが多い、月経痛、月経前に乳房が脹って痛む、痛むイライラ、怒りっぽい、舌質は正常あるいは暗紅、舌苔は白あるいはややブ、脈が弦細などを呈します。
治法は、舒肝解欝・養血益脾
痰湿の不妊(不孕)
実証です。肥満体質で痰湿が内生したために衝任が阻止されて生じます。弁証の要点は、肥満体、多毛、無月経または月経不順、多量の白色帯下、眩暈、動悸、無力感、顔面や四肢の浮腫、胸苦しい、摂食量が少ない、舌苔が白ブ、脈が濡滑などを呈します。
治法は、燥湿化痰・理気
血瘀湿熱の不妊(不孕)
月経時あるいは産褥時の性交のために邪が胞宮に侵入し、気血の流通を阻害し湿熱が停滞したために生じます。月経時に増悪する下腹部痛、微熱、月経周期が不規則、あるいは紫暗で凝血が混じる経血の持続、腰がだるい、帯下が多い、目の周囲がどす黒い、舌質が紅、舌薄が薄黄、脈が沈弦あついは滑数などを呈します。
治法は、清熱解毒・活血化瘀
症状による中医診断と治療(原著:中医症状鑑別診断学)より
期待できる効果
女性ホルモン分泌指令系統の機能回復
男性ホルモン活性化の防止
免疫力低下の防止
ストレスホルモン分泌によるドーパミンなどの分泌抑制による高プロラクチン血症や卵胞の異常形態防止
卵巣や子宮の機能低下の改善
卵子の老化の防止
ストレスによるおこる筋肉や血管の収縮を改善し栄養素
ホルモンなどの運搬量低下の改善
ミトコンドリアの増殖促進(サイトカインの抑制により)
つまり
卵子の質の向上(鍼灸治療開始前と開始後の受精卵のグレードの変化)
卵子の老化防止
卵胞の異常形態防止
女性ホルモン分泌の正常化
子宮内膜状態の改善
着床不全、不育症、流産などの防止
etc…
が期待できることになります。
マッサージの効果
当院では、鍼灸治療が終わった後のマッサージまでを治療と考えています。
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でも、マッサージって不妊や妊活に効果があるの?
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マッサージとミトコンドリア増加の関連について論文を見つけたので簡単にご紹介しますね。
米医学誌『Science Translational Medicine』(サイエンス トランスレーショナル医療)でマッサージの効果についての研究結果の論文が紹介されました。
まずは、その研究の方法を簡単にご紹介します。
11人の男性を運動によって疲労困憊させます。
その後、片方の脚だけマッサージを行い、もう一方の足は何もしないままにします。
被験者の運動が終わった直後、マッサージが終わった10分直後、150分後の3回、マッサージした方の大腿四頭筋とマッサージしていない方の大腿四頭筋の筋肉からそれぞれ細胞を採取します。
マッサージを行った場合、細胞に存在するさまざまな物質に影響を与えることが分かり、結果、マッサージは炎症を軽減し、ミトコンドリアの生合成を促進することが報告されています。
この研究は、筋細胞内と局所的な研究ですが、全身のマッサージの場合、全身にその効果を期待でき、血流改善も期待できますので、卵子に対する効果についても可能性があると考えられます。
実は、鍼治療もサイトカインを抑制する事が知られていますので、鍼灸治療もマッサージもミトコンドリアの増殖促進が期待できる可能性が考えられます。