不妊治療や妊活のために鍼灸治療に来られた皆さんの治療には、必ず、鍼灸治療とスーパーライザー照射を併用して治療を行っています。当院では、どちらもかかせない治療だと考えております。
    不妊鍼灸の治療効果については、別のページでご紹介しておりますので、ここでは、スーパーライザーを照射することでどのようなことが期待できるか。について、ご紹介させていただきます。

    不妊と低反応レベルレーザー治療

    『不妊診療のための卵子学』の中に不妊に対する低反応レベルレーザー(以後、LLLTと称する)照射について成果をあげていることが紹介されています。
    その中から、内容を少し抜粋してご紹介させていただきます。
    週に1~2回、治療回数10回を境にして明らかな妊娠率の増加が認められた。
    1996年~2009年までの間に行ったLLLT照射により、難治性不妊の方全年齢群において約20%の妊娠率を得ていると報告されています。

    卵子に及ぼすLLLT照射の影響

    LLLTの研究として細胞レベルでの研究は難しいため、LLLTの効果発現の機序は解明されていません。今の段階では、臨床的エビデンスの積み重ねからLLLTの効果については推測されている状態ですが、臨床的エビデンスはあるということになります。
    臨床的エビデンスからLLLT照射による不妊治療に対する効果は、末梢循環の不良で卵巣機能や卵子の質の低下が認められる婦人に対し、卵巣血流の増加が卵子の発育に影響を及ぼし、結果、間接的に卵子の質の向上を得ていると考えられています。LLLTの効果は治療回数(10回以上)を経るにつれ効果の持続も認められている例が多いとされています。この他に抗炎症作用もあり、サイトカインなどにも影響を及ぼしているとされています。(不妊診療のための卵子学より)

    LLLTとスーパーライザーの違い

    LLLTは低出力レーザーといい、スーパーライザーは直線偏光近赤外線治療器ともいいます。どちらも赤外線治療器になりますが、違いがいくつかあります。

    LLLTの特徴

    • 波長(600~1000㎚)
    • 触媒がカリウムと砒素の化合物半導体である
    • 自然光と同様に反射・吸収され減衰しながら深部へ到達する
    • 60Wの低出力
    • 波長により生体深達度は異なるが、皮下数㎜で吸収され、それ以下の深度には到達しない

    スーパーライザーの特徴

    • 波長(600㎚~1600㎚)
    • カリウムと砒素の変わりに赤外線灯スーパーアイオダインランプが光源
    • 自然光の直線偏光のみを出力
    • レーザーの定義を満たしていないが、生体深達度が高く、低出力レーザーと同様の手法で効果が示されている
    • 1800Wと高エネルギーを供給できる
    • 生体深達度、約7㎝

    LLLTではなくスーパーライザーの理由

    鍼灸院勤務時代に使っていた治療器がスーパーライザーでした。だから、LLLT(低出力レーザー)という治療器の存在をしらなかった。というのが一番の理由です。

    『不妊治療のための卵子学』を読んでからLLLT(低出力レーザー)とスーパーライザーの効果の違いが気になりました。この本でLLLTについても知りましたから、効果の高い治療器のほうを治療に使いたいという気持ちもでてきました。そこで、LLLTとスーパーライザーの効果の違いについて調べてみることにしました。

    医機学 Vol.80,No3(2010年)に光線療法治療器のそれぞれの特徴について書かれているものを見つけました。その中に、LLLT照射とスーパーライザー照射の効果は同様だがスーパーライザー照射の方が有効時間が長く有用性が高かった症例が報告されている。とあり、スーパーライザーは交感神経の過緊張を正常化すると結論づけされている報告もあるとも書かれていました。
    東京医研 HAー2200LE

    スーパーライザーの効果

    スーパーライザー照射は、不妊治療や妊活の治療以外にもさまざまな症状の治療に使われています。
    ただ、ここでは不妊治療や妊活に効果的だと考えられる内容についてご紹介していきます。
    スーパーライザー照射による期待できる効果の報告もありますし、LLLTと効果は同様との報告もありますのでそれらの報告されている内容についても含めてご紹介いたします。

    卵質の向上とスーパーライザー

    照射前(一番上)と照射後(一番下)温度変化

    星状神経節近傍にスーパーライザー照射をすると副交感神経機能を賦活化(活性化すること)し、相対的に交感神経機能が抑制され末梢循環が改善します。それにより卵巣血流の増加が卵子の発育に影響を及ぼし、結果、卵質の向上を得ていると考えられていることはすでにご紹介しました。それ以外にも期待できるさまざまな効果が報告されています。【右下画像 右星状神経節近傍スーパーライザー照射前(一番上)と照射後(一番下)の温度変化/星状神経節ブロックとスーパーライザーによる星状神経節照射療法より】

    スーパーライザー照射で考えられる効果

    血流増加のよる効果

    • 脳血流量の増加(女性ホルモン分泌の調整を行っている視床下部への血流量増加)
    • 子宮や卵巣の血流の改善
    • ホルモンバランスの改善
    • ミトコンドリアの増加(ATP合成増加)
    • 組織や細胞などでの浮腫やうっ血の改善(老廃物除去など)  etc…

    自律神経調整による効果

    • 免疫機能の制御
    • NK細胞の異常の緩和(NK細胞で着床不全の原因となる細胞の低下)
    • アレルギー反応の緩和
    • 消炎鎮痛作用(抗炎症性サイトカインの増加)

    着床不全・不育症・流産とスーパーライザー

    着床不全・不育症・流産の原因のひとつに免疫との関係が分かってきました。
    母体の免疫学的寛容(トレランス)やNK細胞の異常活性や花粉症と関係の深い免疫などさまざまあります。
    そして、スーパーライザー照射を行うことで、着床不全・不育症・流産などと関係があるとされているNK細胞の異常を緩和できることなどが報告されています。

    免疫機能は、交感神経が過緊張状態になると正常に働かなくことがあります。人は、これら免疫機能などを正常に保つための機能が備えわっています。それを「ホメオスターシス」という恒常性維持機能といい、視床下部が免疫系、内分泌系、自律神経系へそれぞれ指令を出して恒常性維持機構をコントロールしています。
    星状神経節近傍へのスーパーライザー照射を行うことで、視床下部の血流が増し、免疫系へも働きかけてくれることが期待できます。

    その他

    スーパーライザー照射の効果として、瘢痕や癒着組織の軟化と紹介しているサイトを見つけました。LLLTの報告ではそれに近い報告内容も見つけましたが、ちょっとだけ、嘘でしょ。と思ってもいました。でも、こんなことがありました。

    子宮の癒着がみつかり手術することが決まった方が治療に来られていました。癒着が分かってから手術までの間、数ヶ月あったと思います。その間、癒着に対する治療ではありませんでしたが、週1回のペースで鍼灸治療を来られていました。

    退院されて鍼灸治療に来られた日、手術の様子を教えてくださいました。「手術前日の前処理でほとんど癒着が剥がれたため、翌日の手術はあっとゆう間だった」ということでした。

    お話しをお聞きしたとき、癒着時期とも関係があるのかな?と考えたりもしましたのではっきりはわかりません。でも、もしかしたら・・・と思う気持ちもありました。これがスーパーライザー照射の効果か分かりませんが、もし、期待できるのであれば、同じ状況に遭遇したときに役に立てることがあるのかもしれないと思っています。

    参考 光線療法治療機
       低出力レーザーの生体作用
       低出力レーザー照射療法 etc

    スーパーライザーによる星状神経節照射と鍼灸治療を併用することで、より優れた治療効果を発揮することが報告されています。