顔面神経麻痺の後遺症

顔面神経麻痺の後遺症

原因不明のベル麻痺の場合、自然治癒率(何も治療せずに治癒)も高く、約80%~90%の方は後遺症も残ることなく治癒されますが、残りの約20%~10%の方に何等かの後遺症が出る場合があります。帯状疱疹ウイルスが原因であるラムゼイハント症候群の場合、自然治癒率もベル麻痺の半数以下の割合になり、初期からしっかり治療を行った場合でもベル麻痺と比べ、20%~30%治癒率が低下します。そのため、治療に時間がかかることなどもあり、ベル麻痺よりも後遺症が残りやすい場合が多くなります。

後遺症とは

後遺症は、神経麻痺と診断されてから顔の筋肉がどのくらいで動き始め、どんな期間で完全に動きが戻っているか。ということと大きく関係しています。診断されてから数週間で動き始め1~2ヶ月で完全に動いている状態であれば、細胞組織の再生や修復するヶ所が少なかったと考えられ、後遺症の出る可能性がかなり低くなる不全麻痺の状態で、ベル麻痺と診断された方の約80%くらいが不全麻痺の状態です。

しかし、表情筋の動き出しまでに3ヶ月以上かかっている状態は、神経組織のダメージが大きく再生や修復に時間を要した結果であり、損傷が再生できない部位も生じたくらいのダメージが神経に与えられた可能性もある完全麻痺の状態と考えられます。このような場合は、後遺症である病的共同運動などの後遺症が出る可能性が非常に高くなります。ラムゼイハント症候群の場合は非常に高確率で完全麻痺になってしまう可能性があります。

ベル麻痺の場合でもラムゼイハント症候群に比べると少ないですが、後遺症の病的共同運動が出てくる可能性はあります。逆にラムゼイハント症候群と診断されても麻痺の回復が非常によく、早く回復することで、後遺症の病的共同運動などがでない場合も考えらます。後遺症が出るか?出ないか?は、原因が関係しているのではなく、神経損傷の程度(神経組織の再生や修復が多いか少ないかなど)が大きく関わっている考えられます。

顔面神経麻痺の後遺症にはいくつかあり、人によってさまざまですが、病的共同運動・顔面拘縮・鰐の涙・筋力低下などがあります。

後遺症は麻痺の回復に伴って生じるため、全く回復の無い完全麻痺では起こりません。また、神経障害の程度が軽く回復が良好な場合には、症状は軽度です。神経障害の程度が強く十分な回復が見られない場合には、これらの後遺症の症状も強く見られます。

また、後遺症の頻度は病因や年齢、治療方法、治療開始時期などにより異なりますが、麻痺を発症してから6ヶ月以内に完治しなかった場合 は、何らかの後遺症が残るといわれています。

病的共同運動

病的共同運動には、いくつかのパターンがあります。

  • 口を前に突き出す動きの時に患側の眼の周りの筋肉が収縮し、眼を細める動きが同時におこるもの。
  • 口を横に開く、『イーッ』とする動きの時に眼の周りの筋肉の収縮が同時におこるもの。
  • まゆげを引き上げる動きの時に、口角が上に同時に引っ張られるもの。
  • 唾を飲み込む様な動きの時に、首筋から胸にかけて引っ張られるもの。 です。

 

顔面神経麻痺の場合には要求したことに対して、これら2つの動作を同時に起こしてる現象を病的共同運動といいます。 総てのパターンが出るのではなく、個人により単独の場合や複数の場合などがあり病的共同運動のパターンや出方は人により様々です。

病的共同運動の機序

顔面神経が損傷されると脳に近い付け根から抹消に向かって神経が再生していくと言われています。この、修復過程で神経が行き先を間違えたり、神経同士での不要な連絡網のようなものができたりすることによって病的共同運動が起こると考えられています。これらにより動かそうした筋肉とは別の筋肉も意図せず動いてしまうということが起こることとなります。
しかし、この病的共同運動がどんなことがきっかけで起こるのか、何が理由でおこるのかははっきりわかっていません。ただ、医師の中には、表情筋のリハビリを頑張った人ほど病的共同運動が出やすいと話される方もいらっしゃいます。

病的共同運が出現する時期

病的共同運動に気がつく時期については、顔面神経麻痺罹患後、表情筋が動き始めて数ヶ月経過してから出てくる方が多いようです。この病的共同運動などの後遺症がどのように経過していくのか?についてはさまざまですが、1年経過しないとはっきりしたことが言えないという医師もいらっしゃるみたいで、最低でも1年くらいは経過を見ていかないといけないのかもしれません。ただ、顔面神経の損傷がある程度回復していないと起こりません。ですから、顔面神経が損傷される前に近い状況になってきたと感じた前後くらいからがこの症状が出始めるような気がします。ですから、かなり罹患する前と近い表情の動きができるようになってきたかな?と感じた時期くらいから今までと異なる症状を感じるようになってしまいます。ですから、ここからが後遺症に対してどう対処していくのか、考えなおさなければいけなくなるのではないか?と思っています。また、リハビリについても考える必要のある時期なのではないか?と私は考えています。

病的共同運動の治療

病的共同運動が出現した場合、薬などを使っての治療は基本的にはありません。
ただ、改善が補償されるわけではありませんが、リハビリを行って症状の改善を目指すところもあります。その他にはボトックス注射を行ったり、表情筋を支配している神経の再建手術をする方法などもあるようです。ただ、改善が見られるかどうかは、それらの方法を行って経過を見ないと分からないのだそうです。また、リハビリについては、行った方が改善するという意見と逆に顔の筋肉を動かしてはいけない。という意見があり迷うところでもありますが、悪化させないたにもマッサージなどを根気よく行う必要もあるといわれている医師もいます。

顔面拘縮

顔の筋肉の大きな役割の中に眼や口を守るために眼や口を閉じるという働きがあります。それは、人にとって必要な生体防反応でもあります。その反応を早く回復させようと脳から強い指令が伝わります。それにより、表情筋が不随意にいつも収縮している過緊張の状態となり、筋の収縮が起こります。これが顔面拘縮です。口の周囲や頬部の筋肉の過緊張(顔面拘縮)では、顔がこわばり鼻唇溝が深くなったり、眼の周囲の筋肉の過緊張(眼瞼拘縮)では、眼がほそくなったりしてしまいます。

その他に、意識せず不随意に顔の一部がピクピクと動いてしまう顔面痙攣が起こったりする場合もあります。

摂食時の流涙障害(鰐の涙)

後遺症は、運動神経だけでなく、分泌の指令を出している副交感神経でも起こります。本来、唾液腺に入っていた経が再生された後、涙腺に入ってしまうことあり、食事の時に唾液だけでなく涙も出てしまう場合があります。この症状のことを鰐の涙と言います。

筋力低下

顔面神経麻痺を発症すると表情筋はしばらく動かなくなります。神経が再生すると筋肉も動き始めますが、早い段階で動き始める場合は見られませんが、しばらく動いていなかった筋肉は痩せて筋力が落ちている状態です。筋力は徐々に回復していきますが、表情筋を動かせない期間が長くなると、もとの筋力まで回復しない場合もあり、その場合は筋力低下となります。その期間は、6ヶ月とも言われていますが、1年以上経過している場合、表情筋の筋力が元に戻るのは難しいと考えられています。

治療やリハビリに対する意見

当鍼灸院では、鍼に電気を流して行うパルス通電の鍼灸治療は行いません。そして、リハビリについては、今まで顔面神経麻痺に罹患された方と接してきてどう行っていくのか?注意が必要だと考えています。行う時期、行う種類など表情筋スコア検査を行い、そのスコアを指標に十分に注意しながら行う必要があるのではないか。と考えています。ただ、顔面神経麻痺に罹患して、最初の1ヶ月間はリハビリを行うことをあまりお勧めできないと思っています。

後遺症は複雑

麻痺の回復期においては、麻痺や力が低下、筋肉の過緊張などが混在し、とても複雑な病態を呈することになります。例えば、口唇部を例に挙げるとすると、静止時(動かさない時)には麻痺側の口唇は過緊張により引き上がってしまい、患側の鼻唇溝が深くなっているのに、口唇を引き上げる動きをした場合には麻痺側は筋肉は僅かにしか動かず口唇が引き上げられないのに対し、健側の筋肉はしっかり動き、口唇が引き上がるため、その場合は、健側の鼻唇溝が深くなります。そして、この複雑な病態が、1ヶ所ではなく、数ヶ所で起こっている状態と考えることができます。

参考サイト 顔面神経麻痺の治療と後遺症への対応

顔面神経麻痺カテゴリの最新記事

PAGE TOP