鍼灸治療の症例

鍼灸治療の症例

HIM発表の疾患適応例でもご紹介した通り、さまざまな症状に対して鍼灸治療の効果が研究などにより報告されています。さまざまな症状に対する研究報告はありますが、その中でも耳鼻科疾患、自律神経失調、スポーツ障害の症例をご紹介いたします。

耳鼻科疾患とは

耳鼻科症状の中で代表的なものといえば中耳炎や鼻炎などがありますが、来院される方で多い症状は『突発性難聴』『めまい』『耳鳴り』などです。

『難聴』の症状には、感音性難聴と伝音性難聴、両方が混合している混合性難聴があり、感音性難聴の中には、老人性難聴や突発性難聴などがあります。突発性難聴とは、突然、片方の耳に聴こえないもしくは聴こえにくいなどの症状が出現する病気です。ストレスやウイルス感染、内耳の循環障害などが原因として考えられていますが、はっきりとした原因は不明で若い方にも多い疾患となります。また、症状には、耳鳴りなど難聴以外の症状を複数自覚される方も多くいらっしゃいます。
何等かの異変に気づかれて病院を受診されると思います。もし、内服薬の処方や点滴などを行っても症状が改善しない場合でも鍼灸治療で良い方向へ向かう場合もあります。また、病院での治療を妨げることはありません。

『めまい』の症状でよく知られている疾患はメニエール病もしくはメニエール症候群だと思います。メニエール病とは内耳に内リンパ水腫があり、激しい回転性眩暈、難聴、耳鳴り、耳閉感の4つの症状を伴うものになります。メニエール病は、この内リンパ水腫が軽減されれば症状は改善の方向に向かっていくと考えられます。それに対して、メニエール症候群は、内リンパ水腫がなくメニエール病と同じ症状を呈するものになります。
『めまい』を伴うものはメニエール病の他に自律神経失調症や突発性難聴、良性発作性頭位眩暈症、貧血、高血圧、脳腫瘍など様々な疾患で起こる症状です。耳鼻科などの病院で検査を行いきちんとした診断されたうえで鍼灸治療をされることをお薦めいたします。

めまい、難聴などの症例をいくつかご紹介させていただきます。

耳鼻科疾患の症例

めまい 40代前半 

【治療回数】  3回

【症  状】
風邪を引き2週間経過したころからフラフラした感じが出始めた。近所の病院を受診したが異常は見つからなった。その翌日、耳鼻科を受診。ここでも異常は見つかず、耳鼻科で処方され内服薬を服用しているが改善がみらない。めまいは夜の方が強く、頭を左回旋させたときのみめまいが増強され、起床時や頭の上下運動などで増強することはなかった。また、咳が残っている状態で、本日、2回嘔吐し、食欲もないと来院された。

【治  療】
初回鍼灸治療後からめまいは半分以下に軽減し、食欲も出て吐くことも吐き気もなかった
2回目の鍼灸治療後からは咳もでなくなり、めまいもかなり楽になられていたため終了とした。

突発性難聴 50代前半  

【治療回数】  30回

【症  状】
出張で東北に行き、その最終日、右耳の聞こえにくさに気がついた。その日のうちに耳鼻科受診。右耳(低音60dB、高音40dB)の聴力検査にて聴力が低下しており、突発性難聴と診断された。耳鼻科受診当日からステロイド点滴を開始し2日後には右耳聴力は(低音40db、高音15dB)回復し、ステロイドの量を減らし点滴継続したが、ステロイド量を減らした日の夕方より右耳の聞こえにくさ増強。すぐに耳鼻科を受診した。夕方のオージオ検査では右耳の聴力が(低音80dB、高音60dB)耳鼻科受診前より悪化していた。その後、ステロイド量増加するも右耳の聴力低下は進む一方だった。MRI検査も行ったが異常はみられず、右耳の聴力低下以外に耳鳴り、こもり感、音割れもあり、右耳の耳鳴りにより左耳の聞こえにくさも感じていると来院された。

【治  療】
初回の鍼灸治療後の翌日、病院で行ったオージオ検査にて(低音80→60~70dB)と少し聴力に改善がみたれた。
鍼を継続するごとに聴力は徐々に改善されていくが、耳鳴りやこもり感などは飛行機に乗ったり、疲れが溜まったりすると症状が強くなることもあり、開始してからしばらくは聴力以外の症状にあまり軽減はみられなかった。さらに治療を重ねると疲れなどのない日は聴力以外の症状もかなり軽減される状態になっていった。右耳聴力検査に関しては、低音500Hzのみ40db前後で1000Hz以上は正常範囲内の状態がしばらく続いたため、症状が安定したと考え患者さんと話し合い、治療を終了とした。

自律神経失調症

自律神経失調症状を呈する疾患には、自律神経失調症や自律神経失調症候群などの他にも自律神経緊張異常症、自律神経不安定症、不定愁訴症候群などがあります。                                             

自律神経失調症状について

一般に種々の身体的自律神経系愁訴をもち、しかもこれに見合うだけの器質的(病理学的・解剖学的)に変化がなく原因も不明であり、自律神経機能失調に基づく一連の病像をいいます。症状としては、自覚的なものが多く頭痛めまい疲労感不眠、ふるえ、四肢冷感、発汗異常、動悸、息切れ、胸痛、胸部圧迫感、 食欲不振、胃部膨張感、便秘下痢など多彩になります。最近では、症状のうちまとまりがあるものを疾患として考える場合もでてきています。起立性調節障害過敏性腸症候群などがそれらの疾患になります。(南山堂 医学大辞典より抜粋) 

自律神経とは、自分の意志で動かすことのできない部分を動かしている神経です。交感神経と副交感神経がありそれぞれに働きがあります。自分の意志で動かすことのできない部分とは、心臓や内臓などの筋肉を動かすことやホルモン分泌、また、血管の運動や汗腺の働きなどが入ります。どういうことか?というと自分で「心臓よ早く動け!」とか「〇〇のホルモンよ分泌」などと命令を出してもその通りに身体の中で変化は起こせないということです
交感神経は、敵と戦かうために戦闘態勢をとるときに活発に働く神経になります。この時には、頭がさえ、手や足の筋肉が素早く動けるように硬くなったりもします。また、心拍が早くなり、血管が収縮するなどの変化も体内で起こります。その他にアドレナリンやノルアドレナリンの分泌が多くなります。一方、副交感神経は、休息をとっている状態の時に活発に働く神経になります。眠たくなったり、筋肉の緊張が解けたり、血流がよくなり心拍も穏やかになります。それにより、身体の各部位への血流がよくなり損傷部位の修復をしたりします。
この交感神経と副交感神経は、お互いが逆の働きをし、平行のような関係が成り立っています。ちょうど、天秤が机と平行になっている状態だと考えるといいと思います。その状態が身体にとって良い状態といえます。そのどちらか片方が優位になる状態が続くと自律神経失調症のような症状が出現すると考えられます。
緊張状態が続くと、交感神経が優位になる状態が続き、不眠動悸頭痛といった症状や本来なら自己治癒力が働いて改善するはずの肩こりや腰痛などの症状と して現れる場合もあります。逆に休息をとっている状態が続くと、副交感神経が優位になる状態が続き、起きることができない、活動意欲が無くなり、うつ状態ような感じになります。鍼灸治療は、自律神経ぼバランスを整える効果も期待できます。

過敏性腸症候群と起立性調節障害について少し詳しく説明させていただきます。 

過敏性腸症候群

腸管とくに大腸の機能的疾患(病理学的・解剖学的な異常が見当たらない疾患)です。腸管の運動亢進、分泌亢進が起こり、腹痛、下痢、粘液、便秘、腹部膨満などを起こし、便通の種類により分類があります。便秘型、下痢型、下痢便秘交代型、ガス型に分けられますが、同一例に種々の型が出現することがあります。特にストレスとの関係が高いと考えられている疾患です。

  • 便秘型・・・腸運動の緊張亢進による痙攣性の便秘であり、通常は、腸の蠕動運動により送られる便が痙攣のため送られにくくなり、その場所へ留まる時間が長くなることで水分が腸で吸収されることなどにより兎糞状となり、便遺残感などを伴うものになります。

  • 下痢型・・・しばしば突発する腹痛とともに起こり、排便により緩解する場合もあります。粘液便を伴うことが多く、粘液疝痛、神経性下痢などともいわれています。青壮年層に高頻度にみられ精神的ストレスや環境の変化によって増悪することが多いです。食物繊維との関連も指摘されており、低繊維食が内圧の亢進をもたらすといわれています。

  • ガス型・・・ガスが腹部に溜まることによる腹部膨満や腹痛などがあります。ガスが溜まることにより腸管が膨らむことやガスが動くことなどで起こる症状です。ガス型の方は、健康な方に比べて臭いが強くなることが知られています。そのため『人前でおならが出たら恥ずかしい』『おならをしたことを知られたくない』などという気持ちが強く、この症状があることがかなりのストレスになると考えられます。

過敏性腸症候群については診断や治療に苦労される場合も多く、治療抵抗性のものもあります。さまざまな研究がされていますが、詳しいことは、まだ、解明されていません。
過敏性腸症候群の方は、常にトイレの場所を把握することが必要だったり、日常生活において精神的にもかなり辛い症状になりますので、早い段階できちんと治療されることをおすすめいたします。

起立性調節障害

学童・思春期の子供達にはっきりした原因がなく認められる症状で、朝おきられない、めまい、動悸、頭痛などの症状がみられます。頭部と足部の血圧差は横になっているときあまり多きな差がありませんが、立っているときではかなり大きな血圧差があります。通常は、反射性の下肢血管収縮により、自律神経によって脳循環障害がおこらないように調節していますが、ストレスなどによりこの調節が上手くいかなくなってしまった場合に起こると考えられています。

自律神経失調症状の症例

頭痛 高校生

【治療回数】  25回

【症  状】
1週間、部活を休むほどの頭痛が続いた。1週間休んだ後、部活に出れるようになったが、頭痛や頭重がなくなることはなかった。日によって頭痛の回数や強さなどに波があり、入眠に時間がかかることもあった。全く眠れないわけではなく、頭痛の原因も思いあたらない。また、部活を再開したころから下痢が数日続いていた。内科を受診し、自律神経失調症と診断され、処方された内服薬を服用しても改善がみられないため来院された。

【治  療】
初回の後、頭痛回数は少し減少したが、この後、すぐテスト期間となり、この期間は頭痛の回数や強さが増強することもあった。しかし、テストが終了すると頭痛は減少していく。
3回目以降、頭痛・頭重ともに徐々に軽減されていった。約2ヶ月定期的に継続し、初回の1/3程度に軽減したため、治療間隔を空けて様子を見ることとした。長期休み明けで学校が始まるまで様子をみたが、休み明けの学校生活(部活含む)に支障なく過ごせていたため終了とした。
終了して5ヶ月後、ご家族の方から頭痛が出ることもなく日々頑張れているとご連絡を受けた。

頭重・ほてり感 70代後半

【治療回数】  6回

【症  状】
最初に頭重を感じ、その3日後から顔がほてるようになった。頭重を感じた日、病院を受診し、点滴を受けるが効果なく、夕方からは頭重が強くなった。筋肉緩和薬や安定剤、睡眠導入剤、血圧降下剤を服用中であるが、症状が改善しないため症状出現2週間後に来院された。

【治  療】
初回の後から内服薬服用ではみられなかった症状に動きがでてきた。2回目の後までは良かったり悪かったりという状態が続いたが、3回目の後から症状が全く気にならない日も出てくるようになり、その後の治療で症状はほとんど出なくなった。
間隔を少し開けて経過観察を行ったが、症状は出ていなかったため終了とした。

過敏性腸症候群、起立性調節障害

勤務時代にどちらの症状の方も治療させていただいたことがあります。効果がでなかった訳ではありませんが、自分で納得できる効果が得られたと自信を持っていえるほどではありません。
今後、ここをご覧になれたうえで当院を選んでいただき、機会に恵まれましたら、さらに詳しく勉強して症状の改善に向けて力を尽くします。

関連のスタッフブログ

鍼灸治療で効果を感じた過敏性腸症候群の症状!

スポーツによる痛み

スポーツによる怪我の種類には、大きく分けて『スポーツ外傷』と『スポーツ障害』の2つがあります。

『スポーツ外傷』とは、スポーツをしているときに外から大きな力が瞬間的に加わることにより怪我することです。例えば、サッカーの試合中に転倒し、膝を痛めたり、捻挫をした場合などになります。その他に肉離れ・靭帯損傷・骨折・脱臼なども『スポーツ外傷』になります。

『スポーツ障害』とは、スポーツをしているときに外から力が加わった!などという原因がはっきりしないものが多く、比較的小さな力が繰り返し加えれらることでおきます。これは、外から小さな力を頻回に加えられた状態と近くなり、組織に炎症や障害を起こしてしまうものをいいます。テニス肘・野球肘・ジャンパー膝・オスグッド病・シンスプリント・疲労骨折などが『スポーツ障害』になります。
オーバーワークやフォームなどにより同じ筋肉や関節などに繰り返し負担をかけることにより痛みなどを起こします。同じ部位の違和感や痛みが繰り返し出ている場合は、フォームや練習量を見直す必要があると考えられます。
鍼灸治療の対象になるのは、主に『スポーツ障害』です。『スポーツ外傷』の場合では、手術などの処置を行った後のリハビリが行えるようになってからの治療になります。

スポーツ障害の症例

膝痛 30代前半

【治療回数】  15回

【症  状】
ランニング中に違和感から痛みへと変化し、さらに、力が入らなくなる症状へと変化。痛みが出た10日後くらいに整形外科を受診し、膝の水を抜いてヒアルロン酸注射(消炎剤含む)を1回行った。その数日後、ヒアルロン酸注射をさらに1回行った。しかし、両膝に痛みが残っており、うつ伏せ(伏臥位)になっても膝に痛みがあると来院された。

【治  療】
初回の後、伏臥位での膝痛は気にならなくなり、歩行時の膝痛は少し強くなった気がした。しばらく時間が経つと徐々に歩行時痛も改善の方向へ向かい痛みは気にならなくなった。
2回目の後、ウォーキングからフルマラソン出場のための練習を開始してもらうが膝痛は気になることはなかったが、下肢の曲げ伸ばし時に音がすることと違和感が気になる状態へと変化した。また、トレーニングマシン使用後に膝ではなく、膝周囲筋肉の痛みが気になるようになられていた。
4回目の後からランニングを再開された。距離は短めだったが、痛みも力が入らなくなる感じもなく、音がすることと違和感のみとなった。治療を重ねるごとにランニングできる回数も増え、距離も延びて膝の感覚も痛める前に戻っていったため治療間隔を空け、練習を継続しながら足の状態に応じて、次の大会に出場されるまで継続して治療を行った。目指していた大会に出場中、後半に膝痛でたが、フルマラソンを完走できた。大会出場後、数回治療を行い、膝痛の改善みられたため終了とした。
終了した約2カ月半後(この間、来院なし)の大会で膝痛気にせずフルマラソン完走されたとご連絡いただいた。

足(外果下)痛 30代前半

【治療回数】  3回

【症  状】
陸上大会出場直後から右外果(くるぶし)下付近に痛みを感じた。その後も練習をおこなえていたが、大会出場10日後くらいから練習中に痛みが強くなるようになったと来院された。

【治  療】
初回の後から痛み軽減するが、どうしてもヒールを履かないといけない日がありヒールで出勤した。その直後から痛みがかなり強くなり跛行が出てしまうほどだった。ただ、その後、時間の経過とともに治療直後の痛み程度へと軽減した。
2回目の後から次の大会に向けてウォーキングから練習再開をしてもらう。ウォーキングで痛みが出ることはなく、またヒールを履いても痛みがでることはなかったためジョギングを開始し、右足外果下の痛みが出た場合、来院していただくことをお願いして終了とした。(その後、体調管理のため定期的に来院。右足外果の痛みが再発していないことを確認した)

鍼と灸と治療カテゴリの最新記事

PAGE TOP